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BBE プロセスとは?
自然界の音の仕組み
我々が自然界で聞く音は常に基本波と、それぞれの音に特有な高調波成分から成っています。
基本波は単に音の高さ(音程)を決めるサイン波ですが、高調波は音の音色を決める重要な情報を含んでいます。この高調波の含まれ方(様々な高調波の量とその時間的位置関係)によって、我々はその音が何の音色であるかを判断しています。ピアノの音、バイオリンの音、フル-トの音を判別したり、同じピアノの音でもその高調波の含まれ方によってピアノの種類まで判別する事ができます。人の声(知っている人あるいは知らない人)や物がぶつかったり壊れたりする音等も瞬間的に判断できます。
音に含まれる様々な高調波は、基本波に対して特定な時間的位置と強さを持っています。音の波形は極めて複雑ですが、音の情報を正しく伝えるためには、この複雑な高調波の基本波に対する時間的位置と強さを、始終正確に保つ必要があります。
自然界では、1サイクルの基本波に附随した高調波の殆どは基本波より先に届き、若干の残りが基本波より後に届きます。これは音の発生するメカニズムに関連するものと考えられています。例えば、ドラムをスティックで叩く場合、スティックがドラムのスキンに当たった瞬間ノイズが発生します。このノイズは高調波の一部です。そして若干遅れてスキンが振動し始めます。これが基本波です。この様にして発生した音はその一粒一粒が高調波と基本波の時間的関係を保ちながら飛んでくるわけです。(これは極端にモデル化した説明で、実際の音は極めて複雑な構造になっています。何サイクルもの音が繰り返し発生し、多数の音が同時にオ-バ-ラップしたりしています。)
音が人間の耳に届くとまずそこで周波数分析が行われ、その結果が脳に送られます。脳は音の解析を始めますが、これはタイムシェアリングで行われると言われています。因みに位相分析は耳ではなく脳で、しかもかなりの部分を使って、行なわれます。これは位相分析が周波数分析に比べて非常に難しいからでしょう。人間が進化してきた過程で、我々の脳は音を効率よく分析できるようにその仕組みが作られました。脳は音の始めの部分(高調波)が入ってくると直ぐに解析を始めます。しかしその直後に入ってきた後半の部分(基本波)はマスクされて、耳には届いていても聞こえにくくなってしまっています。これは重要な高調波の分析に基本波は単に音程のリファレンスとするだけで詳しく分析する必要がないためと思われます。早く音を判断して然るべき反応をしなければなりません。これは人間の自衛機能の一部で、プレシ-ダンス(Precedance)効果と呼ばれています。
似たような現象がハ-ス(Haas)効果として知られています。これは同じ音が短時間の間に2個所から届いた場合、先に届いた音は聞こえても、後に届いた音はマスクされて理解しにくくなります。映画のサラウンドには数10mSのディレ-を加えますが、これはサラウンドにリ-クしたセンタ-チャンネルの台詞が先に耳に届くことによって、センタ-スピ-カ-からの台詞を聞きづらくするのを防ぐためです。
サラウンドスピ-カ-はセンタ-スピ-カ-より客席の近くにあり、サラウンドへリ-クしたセンタ-の音は、センタ-からの音より先に客席に届きます。そのような状況では耳がサラウンドに引っ張られ本来のセンタ-チャンネルからのセリフが極端に聞き取りにくくなります。それを防ぐためにサラウンドにディレーを加え、センタ-のセリフが必ず先に観客に届く様にするわけです。このように、脳はちょっとした位相のずれで音の分析が出来たり出来なかったりします。
スピーカーシステムの問題点
自然界の音をマイクで撮り、録音したり、イコライザ-やフィルタ-を通したり、増幅したり、そして最後にスピ-カ-を駆動するとその過程で一般的に高域が遅れ、それと同時にそこに含まれる高調波にディレーが生じます。多くの場合それが基本波の後に来てしまいます。そうなると、高調波がマスクされ、脳の解析能力が劣化し、音の明瞭度が急に悪化します。特にスピーカーのボイスコイルのインダクタンスと、可動部分の機械インダクタンスによる高域の遅れと減衰は、電子回路に比べて非常に大きく影響します。
これ等の理由から、スピ-カ-を含めいくら周波数特性がフラットであっても高域に遅れがあると高調波にディレーが生じ、明瞭度が悪化することがわかります。一般的にその明瞭度を回復するために、ト-ンコントロ-ルやイコライザ-が使われます。これは高域をブ-ストし、高調波の量を増やすことによって脳に無理に判らせようとするわけですが、音がキツくなってしまい正しい方法とは言えません。
BBEプロセスとは?
BBEはこういった問題を理論的に解決するために開発されたものです。BBEはまず基本波に対して遅れた高調波成分を基本波の前に移動し、波形を自然界の音と同じ構成とし、次に一般に減衰しやすい高域を若干ブ-ストする事により、より自然に明瞭度を回復させる技術です。位相補正と高域ブ-ストの相乗効果で、イコライザ-のように単にブ-ストを行なう場合に比べ、約半分のブ-ストで同じ明瞭度が得られます。多くのレコ-ディンクスタジオやPA、SRの現場、放送局等では20年前からBBEを導入し、これまでに25万台以上のプロ用BBEが世界中で使われています。多くのミュ-ジシャンもBBEを指定し、自分達の音楽の音質改善を行なっています。
一方録音されたCDやテ-プを再生したり、FM、TV放送を受信する場合、音声信号がプレ-ヤ-、チュ-ナ-、アンプ、そしてスピ-カ-等の機器を通る事により、高調波の遅れや振幅の狂いが再び発生します。これは再生側で解決しなければならない問題です。いくらハイエンドのステレオ装置でもこの問題は付きまといます。ここでもBBEは有効です。
BBEのプロセスにはいくつかのバージョンがありますが、最も基本となるBBEのプロセスについて説明します。BBEはまず音声信号を3つの周波数バンドに分割します。低域は145Hz以下で、145Hzから2.5KHzが中域、そして2.5KHz以上を高域とします。この中域には高調波が含まれます。
BBEプロセスはディレーを、低域に約2.5ms、中域に約0.5ms加えます。これらのディレーは周波数に反比例したリニアーなものです。高域はディレーを加えないため、相対的に低域、中域に比べて進む結果となります。この中域と高域の信号は,高調波のアクティブな振幅補正を行なうためのレファレンスとして使われます。
中域と高域の信号を見ながら、精密な絶対値回路の出力で連続的に、相対的な高調波の比率の検出を行ないます。その出力はVCAのコントロ-ル端子に加えられ、高域に増幅度をコントロ-ルすることにより補正する高調波の量を最適にします。
このBBEプロセスによって高調波の位置と振幅が回復することによって低域が少々物足りなく聞こえる場合があります。そのバランスをとるために50Hz以下の低域を連続的にブ-ストできるようにしてあります。この低域ブ-スト量は自動調整されていませんが、イコライザ-のような単なるブ-ストと異なり、中高域に対し約2.5msのディレーが加えられてあるため、タイトですっきりした低域が得られます。
この様にBBEプロセスを施された再生音は原音に極めて近いもので、自然で明瞭度の高いものです。従来のト-ンコントロ-ルやグラフィックイコライザ-の差は、それらが単なるブ-ストであるのに対して、BBEプロセスは脳の解析能力を助ける分だけブ-スト量が少なくて済み、(イコライザ-の半分)非常に聞きやすい音である事です。
BBEプロセスの応用
近年MP3などのデジタル圧縮技術により、音を効率よく記録、伝送するアプリケ-ションが増えています。この種のデジタルは、効率は良いのですが、高域の位相を正しく保てず、また多量の高調波が圧縮時に捨てられてしまいます。再生時には、高域のデコードが低域よりも時間がかかり、高域がさらに遅れてしまいます。これはデジタル圧縮されたMP3などが非圧縮のCDに比べ、曇って聞こえる理由の一つです。
この明瞭度を回復するには、高域の位相を進めてやり、減衰した高域を若干ブーストしてやる必要があります。これを解決してくれるのがBBEです。DVDやデジタル放送などの圧縮された音源ソースもBBEを使う事によって明瞭度を改善することができます。応用例としては、MP3プレーヤー、DVDプレ-ヤ-、MDプレ-ヤ-、衛生放送受信機、圧縮オーディオデコ-ダ-付A/Vアンプ等があります。
バーチャルサラウンドにBBEを併用すると、サラウンドの音が後方に回りやすくなります。バーチャルサラウンドのプロセスがうまく行われていても、高調波に遅れが出ると効果がうまく出てきません。これにBBEを付加すると高調波の遅れが補正され、脳が化かされやすくなって、後方からサラウンドが聞こえる様になります。
デジタル圧縮のデコーダーや、バーチャルサラウンドのプロセッサには、殆どの場合DSPが使われています。これにBBEを書き加えることにより簡単に音質を改善することができます。既にBBE付のデコーダーDSPも開発済で、今後の急速な普及が見込まれます。
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